甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「い、いちじょう……くん…」



いたなら最初からそう言ってくれればいいのに…。

沙蘭くんもそんなサプライズみたいなことして……ひえっ。



「俺のこと、嫌いになった?」


「……いや……その、」


「俺、なんか悪いことしたか。言ってくれないとわかんないんだよな、そーいうの」



まるで特別な関係同士だった男女が別れるときみたいな言い方。

今の会話ってそんな感じだよ、一条くん。


犬丸と一条くん、なんにもないのに…。



「尋常じゃねえくらい避けられるからさ、真面目に自信喪失してるわ」



すっごい絶望を感じてる……。

ひしひしと悲しみみたいなものが伝わってきては、犬丸の心をグサグサと刺してくる剣。


そーいうわけじゃなくて、そーいうわけじゃないんだけども。


犬丸はこの世界じゃないよなって思っちゃって、そうそう、それそれ。



< 54 / 223 >

この作品をシェア

pagetop