甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「うっ……!」
「え…っ、一条氏……?」
そのとき突如、胸を押さえながら苦しそうに屈みこむ一条くん。
「大丈夫…!?く、苦しいの…?そんなに思い詰まってた……?犬丸はもちろんそんなつもりはなくっ」
「───…つっかまえた」
「ひゃっ?」
あらっ???
なになに、どゆこと……?
ガバッと抱きしめられてからの、ほらまたテディベア。
体育館倉庫に積まれたマットの上、座った一条くんのお膝のなか。
たぶんここが一条くんにとって犬丸の定位置ってやつ。
「だいぶ連中は犬丸のこと嗅ぎ付けてきてる。沙蘭たちだけじゃなく仲間たちにも言ってはあったけど、……マジ怪我してなくてよかった…」
それはたまたま、なんかじゃなかったこと。
たまたまあの路地裏に猫葉くんがいたわけじゃなく、たまたま街中でトビちゃんに会えたわけでもなく。
いつも背後には誰かの視線があって、すれ違う人間たちが私のことを見てはスッと逸らしてきたり。