甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「犬丸、…暁は怖くねーぞ」



だから来いよ───って、言われたような気がした。

断られたことがそんなにもショックだったのか、一条くん泣きそうだ。



「一条くんと犬丸は生きる世界線が違うよ…。だって犬丸っ、価値…みたいなものがあるとも思えないし…」


「犬丸はもはや存在が価値だろ。尊すぎ」


「……うい」


「…そーいうとこな。ほんとたまんねえって」



たまんないのは犬丸だ。

どうしろと。
そんなことサラッと言われてどうしろと。


今日は雨だな、みたいなテンションで言われても無理やって。



「………ふーせん」


「え…?ふーせん…?」


「……やっぱ覚えてねーよな」



どこか切なそうに瞳を落とした一条くん。


ふーせん……?

風船って、息を吹き込んだらぷくーって膨れるやつだよね…?



「残念だけど犬丸。もう逃げられねーと思うわ」



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