甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




お待ちください。

少し前に猫葉くんにも似たようなことを言われた思い出が。



『犬丸は逃げたつもりだろーけど、もう遅い』



それにしてもあのあと大丈夫だったのかな猫葉くん…。


あんなに余裕そうにしてたけど、実際は今ごろ病院で治療してたら笑ってしまうよ犬丸。

それは最低だバカ者め。



「あとはもう、俺に守られるしかないぞ」


「……でも、」


「とか言って、ただ俺が犬丸と一緒にいたいだけ」



やっと会えたんだ───、

噛みしめるようにつぶやいた一条くんに騙されたような気持ちで、私は覚悟を決めた。


最初はそんなものでいいって言ってくれたから、そこから暁のみんなと関わるようになって。



「犬丸、今日は違う散歩ルート───、じゃねえや。一緒にアニメショップ行こーぜ。前にいろいろ教えてくれるって約束してたろ」


「お任せくださいっ!」



気づいたときには、楽しくなっていた。

それが犬丸の6月───。



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