甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
なじみ、ってほどじゃない。
ただ俺の立場含めてマミから見れば魅力的なんだろう。
「でもさー。千明の口から初めてわんこちゃんのこと話されたときは、ほんっと驚いたや。…“そばに置いておきたい女とまた会えた”とか言ってきてサ」
思い出すように沙蘭は笑う。
使用人がいるような自分の家柄は確実に今の公立高校に通うには違和感だらけだというのに、俺はあえてこの高校に素性を隠してまで入学した。
そこには別の目的があったから。
俺がこの世界に足を踏み入れたのだって、その力や情報力を利用して彼女に近づけると思ったから。
たとえ少々脅してまでも、犬丸 亜古という女が欲しかったからだ。
「また、ってことは。……過去に1回会ってるってことでしょ?」
「…犬丸は忘れてる」
「そこもまた千明の溺愛っぷりっていうか、執着の深さなんだろうね」