甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
そうだよこれは執着だよ。
本当は高校で再会を果たしたとき、少しは期待していたが。
しかし俺があの頃とは見た目も性格も変わったように、犬丸もまた変わっていた。
でもやっぱ“あの子”だよなって部分を目にするたび、どうしようもなく欲しくなって強行突破。
「…ふーせん」
「フーセン?」
「…木に、引っかかったんだ。7歳だった俺が持ってた風船が、ある日」
昔から両親は忙しい人間たちだったから、よく兄貴と一緒に親戚の家に預けられていた。
親戚たちは良くはしてくれたけど、それは“俺の家が金を持っているから”ってこと。
だから幼いながらも俺は、親戚の家はそんなに好きじゃなかった。
「よく展示会とかでさ、着ぐるみが配ったりしてるだろ風船」
「あー、あるね」
「そばにいた大人の子供のふりして、それ貰ったんだよ俺」