甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
インターホンが鳴って出てみると、あらびっくり。
犬丸さんに勉強を教えて欲しい、とかなんとか言ってお母さんをソッコー味方につけた一条くん。
3次元アイドルたちのポスターだらけのリビングを見渡して、ふわっと微笑んでいた。
「THE犬丸の家族って感じだよな…」
ぴくっ。
聞き逃しません犬丸の聴覚は。
そして嗅覚も強いのでマッマが焼いてくれたシフォンケーキ。
………ううっ、食べたぃぃぃ。
「じゃあお母さん、ちょっと買い物行ってくるわね亜古」
「えっ…、今から…?」
「片栗粉を忘れちゃったの。そういうことだから、一条くんと仲良くね」
「あっ……」
行っちゃった……。
……チラリ。
一条くんは大チャンス到来だとでも言うかのようなニヒルな笑み。
───と、彼はテレビ台の端に飾られたフォトフレームを見つけた。