甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「……これ、犬丸?」
「それっ、犬丸だよ…!」
「…7歳くらいのとき?」
「わっ、よく分かったね…!」
パッタンパッタン。
そんなに尻尾振るくらいなら出てくればいいものを。
もし沙蘭くんがここに居たら、たぶん犬丸そう言われてた。
「…なあ犬丸。このときあたりにさ、風船で思いつく何か……ない?」
「ふーせん……?」
「ああ」
そういえば前も言っていた。
一条くんはそんなにも風船に思い入れがあるのか、なんなのか。
「…………膨らませられるようになったのは、12歳の頃でした」
「あ、過ぎたわ」
「あっ……」
7歳頃……?
犬丸、なにか風船に泣かされたりしたっけ…?
近所のワンちゃんに服を引っ張られては遊ばれて大泣きしていた記憶はあります。
「…………」
「…それくらいか」
「…ごめん……」
「いや、いいんだ。今があるわけだし」