甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
お世話……。
確かに今日のバーベキューでも沙蘭くんは常に犬丸のことを気にかけてくれていた。
「沙蘭。男ならそろそろ次に進みたい俺の気持ち分かるだろ」
「………まあ」
うわあ、出た……。
沙蘭くんの精神安定剤とも言える棒つき飴。
ペリペリと包装ビニールを外して、すぐに口のなかに入れた沙蘭くん。
「なんだろ、僕の今の気持ちってさ。赤ちゃん犬を友人から預かって、やっと慣れて可愛くなってきたところで飼い主に返す……みたいな」
「…………可愛く?」
「だからそーじゃなくて。我が子みたいな感覚だからこそ、経験して戻ってきたら複雑でしょ」
「なら、子はいずれ親元から旅立つんだ沙蘭。…安心しろって。俺が犬丸を大事にしないわけがない」
………犬丸だけが茅(かや)の外。
ほんの少しだけ寂しくなって、一緒に連れていたルキくんマスコットを握りしめる。
そんな姿を目にしてしまった沙蘭くん、またまた飴玉を取り出す。