捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
1.「俺と結婚しないか」
今年は紅葉が例年より早く見頃を迎えそうだと、今朝のニュース番組で言っていた。
秋から冬へ移り変わるこの時期は、晴天に恵まれてぽかぽか温かい日がある一方、冬将軍により冷たい空気が流れ込み、ぞくりと震える寒さになる日もある。
十一月第一週の今日は前者で、気温は十七度ほど。正午には二十度になる見込みで、小春日和という言葉がぴったりの過ごしやすい天気だ。
しかし、現在このオフィスには凍てつく空気が流れている。
「私たち、結婚しまぁす!」
午前八時。本来なら朝の爽やかな空気に満ちているはずの秘書室で突然結婚報告をし始めた女性を、立花凛は真顔で見つめた。
国内シェア一位を誇る大手化粧品会社であるリュミエールに入社して今年で四年目。企画部に希望を出していたが、配属されたのは総務部の秘書室だった。
就活時のエントリーシートを埋めるために秘書検定を取ったものの、まさか本当に自分が秘書として働くとは思ってもみなかったため、当時はかなり驚いた。