捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
ここで頷けば、即ちふたりの関係を深めることに同意したことになる。
凛は恥ずかしさで肩を縮こまらせながら、消え入るような声で「……はい」と頷いた。
ちらりと視線だけを上げて向かいに座る亮介を見ると、熱い欲を孕んだ眼差しに射竦められる。
それ以上、互いになにも言葉はなかった。楽しみにしていた柿のゼリーを味がわからないまま食べきると、会計を終えた彼と車に乗り込む。
十五分ほど走らせ、着いたのは地下三階地上七階建ての高級マンション。都心の中心地に建ちながら緑豊かな空間で、まるで海外の城のような外観だ。亮介の部屋のある五階までエレベーターで上がり、絨毯敷きの内廊下を進む。
カードキーで部屋のロックを解除した彼に室内へ促され、凛は靴を脱いで揃えると長い廊下の奥にあるリビングへ足を踏み入れた。
「わぁ……」
思わず感嘆のため息が漏れるほど広々としていて、まるでモデルルームのようにスタイリッシュだ。