捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「副社長が……いいんです……」

契約結婚を申し出た亮介に対し、愚直に恋心を打ち明ける勇気はない。そんなことを言ったところで、彼を困らせてしまうのはわかりきっている。

けれど決して〝結婚するから〟彼に抱かれるわけではない。亮介だからこそ抱かれるのだと、彼に知ってほしかった。

「あの、経験のない女性の相手をするのは面倒だと思いますが……」
「バカなことを言うな。君が誰のものにもなっていないことが、俺をどれだけ高ぶらせているか思い知るといい」

くるりと身体の向きを変えられ、そっと指で顎を掬われる。

そのままゆっくりと唇が塞がれた。しっとりと重なった唇は思っていた以上に柔らかく、堅物と呼ばれる亮介のイメージと正反対だとどうでもいいことが頭を掠めた。

しかしそんな現実逃避をしていられたのも一瞬で、唇の隙間を彼の舌先になぞられるように舐められると、ぞくりとした感覚が腰を駆け抜け、身体がビクッと跳ねる。

「キスも初めてだったか?」
「い、いえ」
「……そうか。なら遠慮はいらないな」

自分から聞いておいて不機嫌な声を出した亮介が、最初とは打って変わって激しい口づけを仕掛けてきた。

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