捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「んっ……!」

何度も角度を変え、凛の舌を絡め取り、唾液を交換するかのように交わらせる。まるでこれから始まる夜の濃厚な時間を想起させるようなキスを受け、凛は蕩けそうになる思考を必死に手繰り寄せた。

(こ、こういう時は、まずシャワーを……)

夏ではないにしろ今日は山の中を数時間歩いたし、なにより初めて好きな人と結ばれるのならば綺麗にしてから挑みたい。

「ふ、副社長、あの、待ってくださ……」
「なんだ?」
「あの、シャワーを……」

なんだか彼に抱かれる気満々なセリフな気がして、言ってから猛烈に恥ずかしくなった。

「……あぁ。そうだな、悪い。すぐにどうこうするつもりはないと言いながら、我慢できなかった」

それから案内された豪華な洗面所とバスルームを借り、身体をこれでもかと念入りに洗った後、持ってきたささやかなお泊りグッズで肌を整える。

さすがにパジャマまでは持ってこられなかったためどうしようかと迷っていたが、洗面所にバスローブが置いてあった。きっと亮介が用意してくれたのだろう。下着をつけるか否か五分ほど迷っていたが、湯冷めしそうになって慌てて用意してきた下着をつけてからバスローブを羽織った。

< 114 / 217 >

この作品をシェア

pagetop