捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
リビングに戻る第一声すらなんと言えばいいのか迷いながら、そっと扉を開ける。
「も、戻りました……」
すると寛いだ様子でソファに座っていた亮介が立ち上がり、そばに来るとこちらをじっと見つめてくる。
「……やはり大きかったな」
バスローブのサイズを指しているんだろう。彼の言う通り、腰紐をしっかり締めていても肩がずり落ちそうで、胸元の合わせをぎゅっと握りしめた。
初めて彼に買ってもらった服を着て出社した時も緊張したが、こうして彼に借りたバスローブを羽織っただけのすっぴん姿を晒しているなんて、倒れそうなほど心臓がバクバクしている。
このあとはきっともっと恥ずかしい姿を晒すのだという点については、羞恥で爆発してしまうので今は考えないことにした。
凛が真っ赤になって俯いていると、亮介が持っているミネラルウォーターのペットボトルがパキっと鳴った。
「その格好でそんな顔をされると、今すぐにでも襲いかかりたくなる」
「え……?」
「……いや、風呂で頭を冷やしてくる。水でもいいし冷蔵庫のものも好きに飲んでくれて構わない。待っててくれ」
「は、はい……」