捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

ペットボトルを渡された凛は、亮介の背中がバスルームへ消えていくのを見送ると大きく息を吐き出した。もらった水で喉を潤し、落ち着くためにぐるりと部屋を見渡してみる。

リビングの奥の大きな窓はカーテンではなくブラインドがかけられていて、亮介らしい部屋だと感じた。

何インチかもわからない大きな壁掛けのテレビに黒い革張りのソファ、床のラグも落ち着いたダークグレーで、全体的にモノトーンで纏められている。キッチンは対面式で、手前のカウンターにはバーチェアが置いてある。いつもはあの場所で晩酌を楽しんでいるのだろうか。

凛はひとり暮らしをしたことはないが、独身でこんなにも広く豪華な部屋に住んでいるなんて、ごく限られた人間のみだということくらいはわかる。

化粧品会社として不動の地位を誇るリュミエールの副社長であり、いずれトップに立つであろう亮介の妻になるということは、こうした生活環境のギャップに多々驚かされるのだろう。怯む気持ちはあるものの、もう後には引き返せない。

(だって、私は副社長が好きだから)

改めて自分の気持ちに向き合っていると、あっという間に亮介がバスルームから帰ってきた。

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