捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

慌てて合わせを直そうとしたが、凛の身体を両膝で跨いだ格好の亮介がその真っ白な肩めがけて顔を寄せ、ちゅっと音を立ててキスを落とす。

「あっ……」

まさか唇で触れられるとは思わず身体を固くした凛を、亮介はあやすように抱きしめた。

「凛が嫌がることはしない」
「副社長……」
「俺はこの年までまともに恋愛をしたことがない。女性の扱いも心情を読むのも、あまり得意とは言えない。だから、嫌だと思ったらすぐに言ってくれ」

実直なその言葉は、ベッドの上においてはスマートとは言えないかもしれない。

けれど凛を安心させ、心を解きほぐすには抜群の効果があった。

「嫌じゃ、ありません」
「凛」
「不慣れなのでどうしたらいいのかわかりませんが、りょ、亮介さんに触れられて……嫌だなんて思わないです」

覆いかぶさる亮介の瞳を見つめ、彼の名を呼んで自分の覚悟を伝える。

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