捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
5.不穏な影
リュミエールの創立五十周年を祝う記念パーティーを二ヶ月後に控え、秘書室はいつも以上に慌ただしい雰囲気だ。凛も例外ではなく、やるべき業務は無限にあり、全く終りが見えずにいた。
今年は節目の年ということで、自社商品の宣伝や取引先との関係を強固にするための社外向けレセプションと、日頃会社に尽くしてくれている社員を労う社内向けのパーティーを別で行う予定だ。
凛は社内向けパーティーを担当しており、運営チームとミーティングを行いながら当日の具体的なプログラムを練り、必要な備品やケータリングを手配し、招待状の最終チェックを行っている。さすがに全社員を招くわけにはいかないため、役職付きの社員に加え、各部署から人数を絞って招待する予定だが、それでも膨大な数だった。
さらに社内向けパーティーでは、正式なプレスリリースに先駆けて新ブランドのお披露目をする予定になっており、そちらの準備にも大忙し。主に広報部と連携し、コスメを配置する場所の確認や演出方法、動画の作成など、打ち合わせする内容は多岐に渡る。
会場のケータリングや招待状のチェックなどはグループ秘書がメインとなって担当してくれるが、新ブランドの件については開発に関わっている社員以外には伏せられている情報も多いため、秘書室内では凛以外の人間に手伝いを頼むことも不可能で、頭はパンク寸前だ。
そんな毎日を送っている凛だが、亮介との関係は少しずつ深まっていった。