捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
「すまない、なかなか時間が取れなくて」
「大丈夫です。副社長がどれだけ忙しいのかを一番わかっているのは私ですから。それに、こうして同じ職場で働いて毎日顔を見られる環境ですし」
顔を見られるだけで幸せという本音をオブラートに包み、微笑んでみせた。
ちょっとした休憩中のおしゃべりや出先でのランチなど、以前までは別々に過ごしていた時間を有効に活用して互いを知っていく過程は、凛にとって仕事を頑張れるエネルギーともなっている。
土曜日は亮介の運転する車で出かけ、彼の家へ泊まり、再び身体を重ねた。やはり亮介は凛を気遣い、甘やかし、蕩けるように優しく抱いてくれた。
その優しさから凛を思いやってくれているのが伝わり、急に決まった結婚に対する不安が徐々に薄まっていくのを感じる。
もしかしたら、もうすでに一方的な好意ではないかもしれない。凛が急速に亮介に惹かれたように、彼もまた凛を想ってくれているかもしれない。
そんなふうに心が期待してときめくほど、亮介は凛をこの上なく大切にしてくれた。
入籍は新ブランドの発売が落ち着いてから、結婚式はその後ゆっくり考えることにしようとふたりで話し合って決めた。