捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

『凛、可愛い。もっと俺を感じて』

慣れない凛を蕩けるほど感じさせ、甘やかし、まるで本当に愛されているかのように抱いてくれた。

翌朝起きると真っ先に身体に痛いところはないか確認され、少し気怠いだけで痛みがないと知ると、朝食を振る舞ってくれたり、部屋でランチを食べられるように手配してくれたりと、至れり尽くせりだった。

ポーカーフェイスで言葉数が少ないのは仕事でもプライベートでも変わらないが、凛を見つめる瞳は柔らかく、接する態度はとにかく優しくて過保護なほど甘い。

けれどそれを正直に口にするには恥ずかしすぎるし、できれば自分だけの秘密にしておきたい。

言いあぐねていると、恵梨香はニヤニヤ笑いながら「もういい、なんとなくわかったから」と手を振った。

「よかった、ちゃんと愛されてるみたいで」
「え?」
「あの副社長がわざわざ秘書室に来て私たちに頭下げた時はビックリしたけど、それだけ凛のことが大切ってことよね。チーフに対しても『見る目のない男と別れたのを知って口説き落とした』って言ってたし、きっとずっと凛のことが好きだったのね」

恵梨香の言葉に、少しだけ胸が痛む。

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