捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「覚えてる、よ。久しぶり……」
「うん。十年ぶりくらい? 俺の中の凛ちゃん、制服姿で止まってるから、大人になっててビックリした」

そういう彼こそ学生だった頃の線の細さはなくなり、逞しい大人の男性になっている。野球部だったため坊主に近い短髪だった髪はカジュアルなショートヘアで、艶のある黒髪をワックスで撫でつけている。細身なスーツ姿が長身の修平にとてもよく似合っていた。

「よく私ってわかったね」
「やっぱり面影はあるし、実家のすぐ近くだしね。まだ実家に住んでるの?」
「うん。修ちゃんはひとり暮らししてるって聞いてたけど」
「あぁ。今日は結婚の報告をしに実家に寄ったんだ」
「えっ! おめでとう!」
「ありがとう。せっかくだし少し話そうよ。もう夕飯は食べた?」

修平は報告がてら実家で夕食を済ませ、これから彼女と一緒に住んでいる自宅へ帰るところだったらしい。

凛も夕食は会社で済ませてきたので、ふたりで近くのコーヒーショップへと移動し、十年分の積もる話に花を咲かせた。

修平の婚約者とは大学時代から付き合っていて、合格祝いにくれたリップを一緒に選んでくれた女性だという。

ふたりが美堂という化粧品会社に勤めていると聞き、凛は思わぬ共通点に驚いた。

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