捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「ごめんなさい、ありがとう」
「ううん。遅くなったし送ろうか?」
「大丈夫、もうすぐそこだから。じゃあ修ちゃん、お幸せに」
「うん、ありがとう」

結婚式に招待したいからと、最後に連絡先だけ交換して別れた。手を振り、駅に向かう修平に背を向けて歩き出す。

数歩歩いたところで視線を感じ振り返るが、すでに修平の後ろ姿は角を曲がって見えなかった。

(気のせいかな?)

時刻は午後九時を回っている。夜は昼間以上に空気が冷たく、吐く息も白くなった。明日もきっと師走の名にふさわしい忙しさが続くはずだ。

凛は羽織ったコートの合わせをぎゅっと掴むと、足早に家路についた。


< 136 / 217 >

この作品をシェア

pagetop