捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「業務中に知り得た情報を外部の人間へ漏らすなんて、秘書として一番してはならないことだぞ!」
「違います。たしかに写真に映っているのは私で、彼が美堂の社員なのは間違いありませんが、単なる幼なじみです。そもそもこの日会ったのだって偶然で……情報を漏らすなんてありえません」

濡れ衣だと首を横に振るが、孝充は聞く耳を持たぬまま喚き続ける。

「君が副社長と結婚だなんておかしいと思ったんだ。この結婚を隠れ蓑にしてスパイをするつもりだったのか」
「凛がそんなことするはずないじゃないですか!」

咄嗟に恵梨香が庇ってくれるが、孝充はツカツカと凛のそばまでやってくると、凛のデスクの引き出しを開け、ごそごそと漁りだした。

「原口チーフ、勝手にやめてください」
「おい、原口」

凛だけでなく、亮介も孝充の横暴な態度に黙っていられずに声を上げたが、制止する前に彼がピタリと動きを止めた。

「これはなんだ?」

孝充が凛のデスクの一番上の引き出しの奥から取り出したのは、見覚えのない黒いUSBだった。

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