捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
先程のメールといい、USBといい、間違いなく誰かが凛を情報漏洩の犯人として仕立て上げようとしている。
言いようのない恐怖と不安が、足元からひたひたと擦り寄ってくる気がした。
「なんと言われても、私ではありません」
「君のデスクからこんなにはっきりとした証拠が出たんだ。実際に美堂に勤める男と会っていた写真まである。君が犯人じゃないと証明できるのか」
なにかをした証拠は簡単にでっち上げられても、していないことを立証するのはほぼ不可能だ。悪魔の証明を投げかけられ、言葉に詰まる。
凛が犯人ではないと証明するには、真犯人を見つけるしか手はない。しかしその手立てが思いつかず、凛は唇を噛み締める。
そこに、亮介の鋭い声が響いた。
「今はそんなことを考えている場合じゃない」
指で眉間をぎゅっと摘んだ亮介は、凛の方を見ることなく告げた。
「立花。君はもう上がってくれ」
「え……」
言い放たれた言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。