捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

会社を出ると、なぜか亮介の運転手を務める真鍋が待ち構えていた。

「お疲れ様です、立花さん。お乗りください」
「わ、私ですか……?」
「はい。亮介様から立花さんをお送りするよう言い遣っております」

きっと凛が秘書室を出てすぐに手配したのだろう。まさかこのまま逃げるのを懸念されているのだろうか。

(さすがにそれはないと思いたいけど……)

秘書として、妻になる者として、信じてくれているだろうか。

疑われているのか、失望されたのか、亮介がどう思ったのかがわからない。だからこそ不安でたまらなかった。

あのメールを見た社員は、凛がリュミエールの情報を恋人へ漏らしていると疑うだろう。いくら口先で否定しても、情報漏洩した犯人でないという証拠がない。

実際、他社にコンセプトや価格帯などが知られてしまっていたし、パッケージデザインまで似せられていた。

一部の人間しかアクセスできない情報がコピーされたUSBが凛のデスクの引き出しに入っていたことや、修平との隠し撮り写真を社内全員に向けて送られているところを見ると、犯人は明らかに凛に罪をなすりつけようとしている。

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