捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
(一体誰が……?)
陥れるのに都合が良かったのか、誰かに恨まれていたのか、どちらにせよそんなことをする人物に心当たりはない。
凛が犯人ではないと証明できなければ、今後は開発チームから離れなくてはならないのだろうか。
(秘書室から異動させられるか、それどころか……)
役員秘書でありながら企業の機密を外部に漏らしたと疑われては、これまでのように仕事を任せてもらえるとは考えられない。最悪の場合、懲戒解雇だってあり得るのではないか。
自ら弾き出した疑念にぞっとする。
その瞬間、凛を会社から追い出そうと躍起になっていた芹那の顔が浮かんだ。彼女なら凛にスパイ疑惑をかけ、退職に追い込むくらいやってのけそうだ。けれど彼女はあれ以来会社には来ていないし、孝充ともあれっきりだとしたら凛に会社を辞めさせたいという動機がない。
(亮介さん……)
凛に帰宅を促した亮介の表情を思い出す。