捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
彼女の真面目な秘書の仮面が剥がれ、可愛いものが大好きな女の子の顔になるのだ。けれどすぐにハッと我に返り、きゅっと唇を引き結んで、秘書の仮面を被りなおす。
その一連の様子を見た瞬間、亮介は初めて女性に対し『愛おしい』という感情を持った。
惚れられて面倒なことになったら困るなどと思っていたくせに、いつしか亮介の方が凛に落ちていた。
女性に対し失望すら抱いていた自分が、まさか部下である秘書に恋をしてしまうとは。しかも彼女には恋人がいるらしい。社長の第二秘書で、秘書室のチーフを務める優秀な男だ。
だからこの気持ちは決して口外しない。ただ秘書としてそばにいてくれればそれでいい。
そう必死に言い聞かせていた矢先に、恋人の孝充や、その浮気相手である芹那から心ない言葉を言われている現場に遭遇した。
『な、なんだよ。一年も付き合ってヤラせない女なんて変だって、僕の友人たちも口を揃えて言ってるんだ! どうして僕だけ白い目で見られないといけないんだ!』
『ハッキリ言って、孝くんに未練を持ち続けられるのは迷惑なんです。彼と結婚するのは私ですから。さっさと会社を辞めてください』
腸が煮えくり返るとはこのことだ。
凛を裏切っておきながら、さらに傷つけて排除しようとする彼らに怒りが沸点を超えた。