捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

すぐにでも割って入って一発殴ってやりたい衝動に駆られたが、凛を見てグッとその感情を抑え込んだ。

普通なら泣いて相手を責めてもいい場面だったが、彼女は背筋を伸ばし毅然としていた。きっと職場で騒ぎを起こすまいと、必死に堪えているに違いない。

凛とした後ろ姿を見て「守ってやりたい」と心が動き、咄嗟に恋人の振りをした。

孝充が芹那を選ぶというのなら、もうなにも遠慮することはない。

結婚は突拍子もない提案だと自覚はあったが、互いにメリットのある契約結婚だと嘯いて彼女を囲い込んだ。

すぐに自分の恋心を明かさなかったのは、傷ついたばかりの彼女の負担になりたくなかったからだ。

元の性格なのか家庭環境なのか、凛は他人に甘えることがとても下手くそだ。秘書としては感情をあらわにしないのは美点だが、普段から何事も我慢をすればいいというものではない。

凛が甘えられないというのなら、亮介がとことん甘やかしてやればいい。

そう思い至り、有無を言わさず彼女の好きそうなブランドショップへ連れていき、いくつか洋服をプレゼントした。

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