捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
案の定、店内に入った途端にお堅い秘書の仮面がずり落ち、瞳をキラキラさせている凛を見て、その場で抱きしめたい衝動を必死で堪えた。
亮介が選んだ服に似合うようになりたいと髪型やメイクを変え、蕾が花開くように美しく変貌する凛を見て、きっと誰もが驚いただろう。
秘書室の面々や、これまで新ブランド開発で凛と関わっていた社員たちは一様に褒めちぎっていたし、孝充は悔しそうに彼女を睨みつけていた。
周囲の目を、特に自分以外の男の目を惹くのはいささか面白くないが、凛が女性としての楽しみを謳歌するのは喜ばしいし、それを手助けしたのが自分だと思うと恍惚とした優越感が湧いてくる。誰にも奪われたくないと強く感じた。
芹那が唐突に感情を爆発させ、亮介に迫った挙げ句に出社しなくなった時には、凛を悩ませる存在がいなくなったと清々したのと同時に、彼女が結婚に対してメリットを感じなくなってしまうのではと自分勝手な焦りが湧いた。
そのため業務中に返事を迫るような真似をしてしまったが、彼女はプロポーズを受け入れてくれた。必死にポーカーフェイスを装ったが、相当浮かれていた自覚はある。
少しずつ慎重に、逃げられないように距離を縮め、デートに誘い、初めて凛を抱いた。天にも昇る心地というのはあの時の気持ちを言うのだろう。