捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

仕事中の凛としている彼女も好きだが、緊張しながらも身を任せ、慣れないながらに甘えて縋る凛が愛おしくてたまらない。

ようやく自分のものになったのだ。これから時間をかけて愛し尽くし、彼女の心ごと手に入れたい。

そう思っていた矢先に送りつけられたメールと写真を見て、亮介は手を固く握りしめた。

長年恋愛と距離を置いていた亮介と違い、凛は数ヶ月前までは孝充という恋人がいたし、リュミエールのリップをくれたという幼なじみの男の話も聞いている。

今、凛は自分の婚約者だし、過去に嫉妬するなど生産性がないとわかっていても、ジリジリと胸が焦げ付くのを止められない。自分の中にこんなにも黒い嫉妬心というものがあるとは、亮介は思ってもみなかった。

他事でなく情報漏洩についての処理と、新ブランドの対策を練らなくてはならないのに、凛が隣にいると写真がフラッシュバックしてしまう。

あの男は一体誰なのか、いつ撮られた写真なのか、なぜ抱き合っているのか、問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。

「今はそんなことを考えている場合じゃない」

自分に言い聞かせるように口に出し、凛を先に帰すことにした。

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