捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
落ち着いてメールの文面を見れば、凛個人に責任をなすりつけようとしていて、怨恨の線が濃厚だと思われる。
他社の人間がセキュリティを掻い潜ってリュミエールのサーバー内のフォルダにアクセスできるとは考えにくく、プロの産業スパイにサイバー攻撃を仕掛けられたか、情報を漏らした人間が社内に、それも近い位置にいる可能性が高い。
凛のデスクにUSBが入れられていたことを考えると、後者に違いないと亮介は睨んでいる。
凛が貶められている現状を知れば、きっと犯人は満足するだろう。
それならばここで感情的になって無計画に凛を庇うのは愚策だ。少し泳がせ、様子を見つつ対策を講じなくてはならない。
亮介の態度にショックを受けた様子の凛を思い出し、胸が痛む。
本来なら微塵も疑っていないのだと微笑みかけ、心配しなくていいと抱きしめたかった。
けれどあの場でそうするわけにはいかず、また大人げない嫉妬心にかられていたのもあり、副社長という堅物の仮面をかぶることでなんとか凌いだのだ。
あの状態の凛をひとりで帰すのは心配で、真鍋に電話をして車を手配した。マンションのコンシェルジュにも電話をして必要なことをすべて伝えると、すぐに本題に取り掛かる。