捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

アイシャドウやリップのパッケージはリュミエールが発売を予定しているデザインとかなり似通っているが、やはり要となるのはコスメとしての質だ。

リュミエールに新ブランドができるという情報を得て、ただ先に世に出すという目的だけで打ち出されたもの。そんな卑劣でなんのポリシーもないお粗末なブランドに、心血を注いで作り上げたリュミエールのコスメが負けるはずがない。亮介はそう確信した。

「これなら予定通り新ブランドを発表しよう。初めは多少似ていると非難の声が上がることもあるかもしれないが、うちの商品はこんな付け焼き刃のブランドに負けはしない。俺が保証するし、全責任を負う。みんな胸を張って、発売までもうひと踏ん張りしてほしい」

クリエのプレスリリースから約三時間後。新ブランド開発チームが集まった会議で亮介が自信を持ってそう言い切った。

普段堅物だの冷徹だの言われている亮介が熱く鼓舞したおかげで、不安に駆られていた社員たちの表情が晴れやかになり、活気が戻ってくる。

そんな中、開発部責任者の山本がゆっくりと発言を求めて挙手をした。

「あの、副社長。立花さんは……? 彼女が各部署との調整をしてくれたおかげでスムーズに進んだ部分もありますし」

彼がおずおずと発言すると、他の社員からも同意見が上がり、皆一様に頷いている。

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