捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

亮介は寛容な友人に感謝しながら、詳細な固有名詞は伏せ、社内の一部の人間しか知り得ない情報が他社に漏れていた件について説明した。

「その情報は共有サーバーのフォルダで管理されていて閲覧制限をかけてある。社外の人間が簡単にアクセスできるとは考えにくい。かといって、アクセス権限を持っている人間が情報を流したとも思えないんだ」
「なるほど」

大和は少しの間考え込み、「産業スパイは専門外だから詳しくはないよ」と前置きしたあと、いくつかの考えられる事例を教えてくれた。

フィッシングと呼ばれるような社員を騙すメールを送り付けて悪意のあるリンクをクリックさせることで情報を開示させる手口や、取引先を装って伝送ネットワークを通じてデータを取得する盗聴のような手口もあるそうだが、多くはそういった犯罪に精通した人間が使うらしい。

大和が疑ったのは、ハッキングに近い手法だった。

「素人が行う場合に多いのが、リモートデスクトップでアクセス権限を持っているパソコンを介して情報を盗む方法だ。これならある程度パソコンの知識を持った人間なら誰でも考えつく」

リモートデスクトップとは、離れた場所にあるパソコンを自分の手元にあるパソコンのキーボードやマウスを使って操作する仕組みを言う。

要するに自宅のパソコンから会社のパソコンを操作できるというものだ。

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