捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
ただしリモートデスクトップは許可制で、接続するパソコンの共有設定がONになっていなければ不可能だ。当然だが、通常会社のパソコンはセキュリティ上OFFにしている。
「接続するパソコンの設定さえ変更できれば可能、ということか」
「そう。犯人か、または共犯者が、操作したいパソコンの設定を弄れる位置にいる可能性があるということだ」
「個人に与えられているパソコンにもセキュリティはかかっているが」
「それについてはもっと簡単だ。ショルダーハッキング、まぁ簡単に言えば盗み見みたいなものだよ。後ろから肩越しにパスコードを打つのを見て覚えておくやり口だ。操作したいパソコンの周囲に誰もいない隙を見計らって、ショルダーハッキングしたパスコードを使ってリモートデスクトップの共有設定をONにしておく。そうすれば権限のない自分のパソコンからでも機密情報にアクセスできるってわけだ。履歴でIPアドレスを確認すれば操作した端末もわかる。問題は……」
「問題は?」
「どのパソコンを仲介したのかの特定が難しい点だ。それに、リモートコントロールしている時は仲介されたパソコンはブラックアウトする可能性がある」
「それならおおよその予想はついている」
亮介は眉間に皺を寄せて答えた。
フリーアドレスから全社員あてに送られたメールは、明らかに凛を貶めようとしているものだった。もしも凛を情報漏洩した犯人に仕立て上げようとしているのなら、サーバー内のフォルダにアクセス履歴が残るように彼女のパソコンを介して情報を抜き取るだろう。