捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
亮介は身動きを取らない孝充に代わって、彼のパソコンを操作しIPアドレスを表示する。探していた数字の羅列と間違いなく一致すると確認すると、大きくため息をついた。
「このパソコンの他にもう一台あるはずだが……自宅か」
亮介の確信を持った言葉に、俯いて固まっている孝充の唇がカタカタと震える。
「なんで……凛を疑っていたはずじゃ……」
罪を認めたも同様の言葉が孝充の口から零れ、周囲は驚きと失望の視線を向けている。
神経質で融通が利かないきらいがあるものの、その生真面目さと優秀さゆえに若くして秘書室チーフの椅子に座る男だが、ここ最近の振る舞いで同僚秘書たちからの信頼は地に落ちていた。
「立花は優秀な秘書だ。こんな裏切りをするはずがない。それから、お前に彼女をファーストネームで呼ぶ資格はない。不愉快だ」
亮介が苛立ちを隠さずに言い放つと、孝充の顔に朱が滲んだ。
「あ……あなたのせいで……」
「なんだ?」
「あなたが僕から凛を奪ったせいでこんな目に遭ったんだ……っ!」
普段は物静かそうに見える孝充が急に激昂し、髪を掻き毟りながら叫ぶ。