捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「あなたが凛を奪わなければ、僕の人生設計は狂いはしなかった! 僕を差し置いて凛を第一秘書にしたのがそもそもの間違いの始まりだ! まだたった四年目の人間に副社長の第一秘書を任せるなんて……そのせいで凛は余計に仕事に没頭し、あなただけを見つめていて、昼休みに頻繁に芹那とふたりきりになったってヤキモチを妬く素振りも見せなかった。僕を全く頼ってくれなくなった!」
「だからなんだ。立花は必死に仕事をしているだけだ」

凛という恋人がいながら後輩と浮気をしたのは孝充だ。彼女を傷つけ、排除しようとする芹那を放置していた。男としても上司としても最低な振る舞いだ。

実際、彼と別れるまで亮介と凛はプライベートな話は一切していなかった。孝充は事実を受け入れられず、責任転嫁しているだけにすぎない。

「こ、今回のことだって、僕は芹那と結婚する気なんてなかったんだ! それなのに妊娠したから責任を取れと父親にまで引き合わされて、断れば専務の顔が潰れるなんて脅されて、僕には芹那のわがままを受け入れる以外に道はなかった。結局嘘だとわかって、ようやく破断にできて、やっと凛と話し合えると思ったのに彼女は僕の話に耳を貸してくれなかった。一年も付き合っていたのに、たった一度の失敗で!」

凛を先に帰して正解だった。こんな最低なセリフを彼女に聞かせたくはない。

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