捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
「凛……っ」
肩や背中に痛みを感じるほど強く腕を回されたのは初めてで、息が詰まるほど苦しい。けれど、離してほしいとは思わなかった。
「信じてください。本当に私じゃありません……っ」
凛は悲鳴にも似たか細い泣き声で主張した。
秘書はいかなる時でも冷静沈着でなくてはならない。そう自分を律しているからこそ、あの場ではすべてを飲み込んだ。
けれど本当は大声で叫びたかった。
私じゃない。誰かが自分を陥れようとしているのが怖くて仕方がない。ここに残って新ブランドの成功のために一緒に頑張りたい。
言葉にならなかった思いが今、涙となってポロポロと零れ落ちる。
「すまない。君が感情を抑えて振る舞うのが上手いのを知っていたのに、それに甘えてあんな風にしか言えなくて……本当に悪かった」
「亮介さん……」