捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

芹那は入社一年目。金髪に近いミルクティー色の長い髪を巻き、ラメやグリッターをふんだんに使ったキラキラのメイク、大きな花柄のワンピースに高いヒールのパンプスといった装いは、とても秘書とは言えない出で立ちだ。

貿易会社の重役令嬢で、私立の女子大を親のコネでなんとか卒業し、専務の口利きで社会勉強のためとお客様扱いで入社してきた。

そのため朝の清掃や電話対応など、秘書以前に社会人としてやるべき業務などは一切したがらない、凛にとっては困った後輩だ。

そんな芹那の結婚相手は、社長の第二秘書を務める秘書室チーフの原口孝充。

社長の第一秘書を務めている室長の林田は常に社長に帯同しているため、実質この秘書室をまとめているのは孝充だ。

シルバーフレームの眼鏡の奥にある切れ長の瞳は怜悧な光を湛え、過密なスケジュール調整も、贈答や慶弔業務も難なくこなす。

孝充は凛に秘書としてのイロハを教えてくれた上司であり、ほんの一週間前までは凛の恋人だった男性だ。

「結婚って……原口チーフと、近藤さんが?」

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