捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

おめでたい話題にも関わらず、祝福ムードではなく不穏な空気になってしまったのは、秘書課の大多数の人間が、凛と孝充の関係を察していたからだ。

特にひとつ上の先輩である荒井恵梨香には、凛と孝充が交際していたことを直接報告していたため、眉をひそめてふたりを睨みつけている。

「そうですよ? やだぁ、荒井さん。他に誰がいるんですかぁ」
「誰がって……」
「先輩たちを差し置いて先に結婚しちゃうのは謝ります。ごめんなさぁい。でも、この子のためにも、私は家庭に入らなくちゃって思ったんです」

その場の独身女性のこめかみがピクッと動いたのにもお構いなしに、芹那はシュッとくびれたウエストに両手を置く。

怒り心頭な恵梨香に油を注ぐような芹那の言動は、心を無にして聞いていた凛にも大きな衝撃を与えた。

(妊娠……してるんだ)

凛は視線を芹那から、彼女の隣に立つ孝充に移した。

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