捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
2.可愛くなりたい理由
凛が化粧品に興味を持ち始めたのは、中学を卒業する頃。
近所に住んでいた五つ上の幼なじみが、高校受験の合格祝いにくれたリュミ―エルのリップがきっかけだった。
ドラッグストアで買える薬用リップとは違い、とにかく可愛くてキラキラしていて、持っているだけでテンションが上がるパッケージ。
ほんのりと色付くだけのリップバームだったが、塗ってみると顔全体の血色がよく感じられ、顔色や表情まで明るく見えるのに感動すら覚えた。
それ以来、コスメの持つ魔法のような力に魅了され、いつかキラキラした化粧品を作る仕事に携わりたいと夢を持つようになった。
現在、リュミエールには社名と同じ名を冠するプレステージブランド『リュミエール』の他に『彩花(さいか)』や『コカ』など、価格帯やターゲット層の違う十四のブランドがある。
そこに新たに加わる新ブランドの企画が亮介の主導で進み、来年二月のお披露目に向けて大詰めを迎えていた。
副社長の秘書としてリュミエールの新ブランド立ち上げに関わっている凛は、学生時代の夢を叶えたと言える。
やり甲斐のある仕事で、毎日が充実している。しすぎているほどに。