捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

企業から依頼を受けたインフルエンサーが、自分たちの動画の中でその商品をPRすることで対価の報酬を得る。無料で見られる動画サイトやSNSでの口コミが大きな販促ツールになっているため、フォロワー数が伸びてくると、そういった依頼が舞い込んでくるものらしい。

しかし、今のご時世どんなところから悪意ある大人に搾取されるかわからない。

見ず知らずの三十万という人数が双子の動画を見ていると思うと、誇らしく応援したい気持ちと同時に、やはり心配や恐怖心も芽生えてくる。

双子とは八つも年が離れているせいか、いつまで経っても子供扱いしてしまい、再三ネットリテラシーについて話し、危険がないように活動してほしいと伝えている。

母もそうしたSNS事情には疎いため、学生のうちはSNSで金銭の発生するやり取りは禁じている。

父親は十年ほど前に事故で他界しており、看護師の母が女手ひとつで育ててくれた。

高校生の双子の妹と、大学に通う弟もいるため、まだなにかとお金がかかる。長女として少しでも家計を助けるため、凛は実家で生活しながら給料のほとんどを家に入れていた。

双子もそうした事情から少しでも協力しようと申し出てくれるが、今の生活を辛いと思ったことは一度もない。

憧れていた会社で、大切な家族を守るために働く。それは凛にとって、ごく当たり前のことだった。


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