捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「リュミエールの副社長だよ」
「付き合ってんの?」
「まさか! 秘書として彼の下で働いてるの」
「……へぇー」

まったく納得してなさそうなニヤニヤした顔で返事をする大志の肩をぺしっとたたきながら、凛は地下鉄で美容室に急ぐ。

到着するとすでに閉店したあとで、凛はカットモデルということで無料で施術を受けられた。

黒髪をブラウンに染め、緩いパーマをかけてスタイリングしやすくしてもらうと、少し垢抜けた気がする。

これなら亮介の隣を歩いてもいいかもと想像し、それが副社長と秘書としてでなく、買ってもらったワンピースで手を繋ぐ想像をしてしまい、ひとり悶えたのだった。


週明け、相変わらず芹那は凛が頼んだ仕事をまったくせずに周囲を呆れさせるばかり。

秘書室チーフである孝充も我関せず注意しないため、うんざりして叱りたくなるが相手が妊婦だと思うと強く出られない。

どうしたものかと頭を悩ませていたが、亮介が出社するなり開口一番に髪型を褒められ、鬱々とした気分が吹き飛んでいく。

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