捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
「まずはイズミから向かうか」
「はい。報告書には複数のインフルエンサーが動画に取り上げてくれたおかげで、リュミエールの既存のリップの売上がかなり伸びているそうです」
「あぁ、下半期のベストコスメを選出してるのか」
「そうですね。あとは彩花のクリスマスコフレの予約数ですが、前年と比べて少し伸び悩んでいます。こちらは隣の店舗のコフレの人気ぶりに押されている形のようです」
真鍋が運転する後部座席に座り、タブレットでリュミエールの他にいくつかのプレステージブランドが入るイズミ百貨店の動向をチェックする。
彩花の隣にある海外ブランドのクリスマスコフレは毎年爆発的な人気で、実は凛も双子の妹にねだられて買ったことがある。例年童話のヒロインをモチーフにしていて、ストーリーと絡めてデザインされたパッケージはどれもうっとりするほど可愛い。
ただコスメとしては日本人には色が奇抜で発色が良すぎるため、万人が使いやすいかといえばそうではなかったが、今年はそこを改良してきているようだ。
そう話すと、亮介が押し黙ってこちらを見ている。
「副社長?」
「立花はどうしてうちを選んだんだ?」
まるで就職の面接のような質問に面食らいつつ、凛は真面目に答えた。