捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
今の発言を額面通りに受け取るならば、昨日大志と鉢合わせした時も、修平からプレゼントを貰った話にも、亮介は嫉妬しているということになる。
(いやいや、まさか。だって副社長は私を好きで結婚を申し込んだわけじゃない)
先日の彼の言葉を思い出す。
『互いに結婚することで問題が解決できるんだ、悪くない話じゃないか?』
縁談よけや両親を安心させるために結婚しようという考え方は凛にはなかったが、亮介なりに凛との結婚を真面目に考えているというのは伝わっている。
けれど、それはあくまで彼にとって結婚をすることにメリットがあるからだ。
これまでの副社長と秘書という関係性から脱却するために口説き文句を並べているのだとわかってはいても、自分に対し独占欲を抱いているようにみせる亮介にドキドキさせられっぱなしだ。
冷静にならなくてはと自分を戒めてみても、車内に漂うむず痒い空気に飲まれ、心拍数は上がりっぱなし。
結局なにを言い返すこともできず、そのままタブレットに視線を落とし、仕事に切り替えたフリをするので精一杯だった。