捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
マットタイプはくすんだサーモンピンク、ツヤタイプは白色の、円形ではなく四角いパッケージ。キャップとリップ本体の上面には新ブランドのロゴマーク、ボディにはブランド名のロゴの刻印を入れる予定らしい。ロゴデザインが正式決定されたらすぐにでも生産できるよう手配済みだと追加で説明された。
(素敵……! いよいよ新ブランドが形になってきた。このアイシャドウも可愛いけど、リップの本体に刻印があるだけで高級感があるし、抜群におしゃれで可愛い!)
静かに感動していると、島田に「ラスターの十二番を」と指示した亮介が、おもむろに凛の座るソファの前に片膝をついた。
「ふ、副社長っ?」
「あぁ、リップブラシも貸してくれ」
これには開発部のふたりも慌てたが、凛が一番驚いていた。まさか最後の仕上げのリップを、副社長直々に塗るだなんて思ってもみなかった。
(わ、近い……っ!)
周囲の驚愕をよそに、亮介は受け取ったリップのキャップを外し、ブラシで刻印部分を何度か撫でると、左手を凛の頬に添えた。
「少し口を開いてくれ」
男性らしい大きな手に頬を包まれ、至近距離で甘く低い声音を耳にすると、仕事だとわかっていても勝手に頬が熱くなる。