捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

正論で淡々と断罪され、芹那の顔はみるみるうちに赤くなっていく。

「なによ! 私だってもっと秘書らしい仕事をさせてくれるのならちゃんとやります! 化粧品会社の秘書なら、私みたいに若くて可愛い方がいいじゃないですか! それなのに第一秘書は地味な立花さんかおじさんしかいないし、グループ秘書なんて雑用ばっかり。仕事を辞めたいって言ったらパパからお見合いして結婚しろって言われるし! おじさん相手のお見合いなんてごめんだから、妊娠したって嘘ついて適当に結婚しちゃおうと思ってたのに――――」

一気に捲し立てると、芹那はいいことを思いついたと無邪気に笑う。

「副社長、立花さんと付き合ってるって言ってたの、本当ですか?」

唐突な話題の方向転換に、亮介は眉間に皺を寄せる。

「……そうだとしたら、なんだ」
「噂と違って女嫌いじゃないのなら、私の方がよくないですかぁ? 絶対立花さんよりも満足できると思いますよ? 容姿とか家柄はもちろん、他にも色々と」

彼女の言う『色々』にどんな意味が含まれているのか、凛には考えずともわかる。なぜ自分の元恋人が彼女と浮気に至ったのかを思い出し、胸の奥が鈍く痛む。

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