捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

「恋愛のいざこざを仕事に持ち込むなんてありえないし、そもそも近藤の方が糾弾される側だろう。なぜもっと早く言わなかった」
「お忙しい副社長を煩わせるほどのことでは……。それにこれは秘書室内の問題ですので」
「秘書室の指揮系統が機能していないからこうなっているんだろう」
「そ、その通りですが……」

明らかに芹那の態度が変わったのは、孝充の結婚報告の日からだ。

凛は浮気をされた側で落ち度はないとはいえ、当事者であることを考えると誰かに相談もしづらかった。

口ごもる凛に対し、亮介は優しい口調で諌めた。

「だったら上司としてではなく、男として頼ってほしい。我慢しすぎて自分を蔑ろにしないでほしいと言ったはずだ」
「それは……」

そう言われたのは覚えているが、長年培ってきた性格はそう簡単には変えられない。

(だから孝充さんにも可愛くないって言われて浮気されたんだ……)

ずんと気分が沈み、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまう。

(もしかして、副社長も呆れてる……?)

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