捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
ならば、彼の言葉に甘えてしまおうか。
自分の人生において、こんなにも急速に心が惹きつけられる人に出会ったのは初めてだ。そんな相手から結婚を申し込まれているのだから、これ以上の幸せはない。
(いつか、この人に愛されてみたい……)
そう思う気持ちがどんどん大きく膨らんでいく。
たとえ始まりが恋愛でなくとも、今は好意の矢印が一方通行だとしても、夫婦として徐々に仲を深めていけばいい。
亮介は凛に負けず劣らず真面目な性格をしている。できないことは口にしないはずだ。結婚したら妻として大切に扱ってくれるだろう。
縁談避けの急拵えの妻だとしても、凛を選んでくれた。その延長線上で、いつか女性として愛してもらえたら……。
会社では秘書として彼を支え、家庭では夫婦として穏やかに暮らしていく。亮介となら、そんな未来が描ける気がした。
「甘えても、いいのでしょうか……?」
凛はカラカラになった喉をこくんと鳴らし、真っすぐに亮介を見つめる。