捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
「私も……副社長を夫として、ずっと一緒にいたい、です……」
極度の緊張感が身体中を駆け抜け、自分でも驚くほどか細い声が震える。
できればいつか女性として愛してほしい。そのひと言は言えなかった。
見て見ぬふりができなくなるほど育った亮介への恋心が、喜びと切なさの間を行ったり来たりしている。
胸の奥で主張し続ける胸の痛みを無視して亮介を見つめると、彼はとても嬉しそうに目を細めた。
「よかった……ありがとう」
手を取られ、そっと握られる。たった今結婚を承諾したというのに、彼に触れたのはこれが初めてだ。それぞれの手の温度が混じり合い、同じになっていく。たったそれだけのことに、ひどく胸が震えた。
(私、副社長が好き……)
幼なじみの修平にも、唯一の恋人だった孝充にさえ感じたことのないこの切なくて甘い気持ちこそ、恋なのかもしれない。
「まだ落ちていないな」
亮介が大きな手で凛の頬を包み、親指で唇を撫でる。