キミと掴む、第一歩。
プルプルと怒りで肩を震わせた瀬尾くんは、「さっき」とぼやく。それに続く言葉を静かに待った。
「瀬尾くん"も"って言っただろ。ってことは、過去に何か言われたってことじゃん。史倉がそうやって小説を書いてることを隠しだしたのも、それが原因なんだろ」
「……っ!!」
なんで、どうして気づいちゃうの。
そんな些細な言葉の使い方だけで、全部分かっちゃうの。
それに今、わたしのこと『史倉』って……。
「無理して言わなくていいけど、これだけは言っとく。俺は、過去のそいつらとは違う」
フラッシュバックする記憶。忘れようとしても、絶対に忘れられない冷たい温度の声と空気と視線。
彼らとは、違うと。そう、瀬尾くんは言ってくれた。
凛と光を宿した瞳が、まっすぐにわたしを射抜いてくる。
「史倉はアニメ、好き?」
「えっ……好き、だけど」
「マンガ、好き?」
「好き、だよ」
意図が分からないまま、とりあえず正直にうなずく。大切な糸を引き寄せるように、言葉を紡いでいく瀬尾くん。
「小説、好き?」
「……うん、好き。」
うなずいたわたしを満足げに見つめてから、ノートに視線を移す。