キミと掴む、第一歩。
「俺も全部好き。たぶん、過去の奴らも今の奴らも未来の奴らも、みんな好きだよ。さっき史倉は妄想だ黒歴史だって言ったけど、それって大好きなアニメやマンガ、小説の作者をバカにしてるのと同じことだろ」
「あ……」
「人はいつだってフィクションとともに生きてるし、日常の面白みにもなるじゃん。そんなすごいもの生み出せる史倉が自分を卑下してどうするの。自信持たないと」
「でも、面白くないし……」
「それは読み手が決めることだよ。少なくとも俺は、面白いって思った。だから続きが読みたいって言ったんだ」
自分のために書いている分には楽しい。でも、人に読ませるためには自信がない。そんな矛盾した心を持っているわたしが、小説家になんて────。
「史倉」
ふいに名前を呼ばれて、思考が停止する。
視線を上げると、そこには優しい目をした瀬尾くんがいた。
「俺ね」
ゆっくり目を閉じて、唇を開く瀬尾くん。長いまつ毛が影をつくって、ただただ美しかった。まるでお人形さんみたいだ。
「サッカー選手に、なりたいんだ」